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有古ニュース  2008.3


■北京オリンピックを契機に中国ブランドの認知度は高まるか?

 今年の初め1月14日、中国・上海の大衆夕刊紙「新民晩報」に「中国のブランドはなぜ「世界ブランドランキングベスト100」と無縁なのか?」と題して、 中国自前のブランドの状況を紹介する記事が掲載されました。
 中国では、様々なランキングをバロメーターとして価値観を形成する性向があります。一般公衆にとってわかりやすいからでしょう。以前からは米国 Fortune誌が毎年発表している企業100傑を中国企業の目標としてランク入りを煽る記事が散見されていました。今回の記事は、米国の BusinessWeek誌が毎年掲載する世界のブランドランキング100が引き合いに出されています。
 記事では、中国・上海の生活では、NOKIAの携帯、Googleでの検索、ナイキの靴、ipod、キヤノンのデジタルカメラ、LGの冷蔵庫、フォルク スワーゲンPOLOといった最新の世界ブランドランキングに入るブランドに囲まれて生活するというステータスを感じつつも、その中に中国のブランドがない ことを嘆くことから中国のブランドの状況を紹介しています。ランキングが開始されて以来7年間中国ブランドは1つとして選ばれたことがないそうです。自ら のブランドなど軽視して専ら外国ブランドを崇拝し、模倣品の巣窟と化しているかの如く報道される向きが強い中、中国独自のブランドについて中国の人がどう 考えているのか、北京オリンピックを契機にブランド攻勢を仕掛けようとする中国企業の思いも興味深いので以下、コメントを交えつつ記事の内容をかいつまんで紹介します。

1.まず、今回(2007年)のランキングを分析しています。国単位で分析する当たりは、お国柄を示そうとしているのかも知れませんが、国家主義的発想が 色濃く反映されているように感じてしまいます。
ベスト4は、前年と同様でランク順にコカコーラ、マイクロソフト、IBM、GM。NOKIAは前年の第6位から第5位に、トヨタが第6位、インテル、マク ドナルド、ディズニー、メルセデスベンツが順に第7位から第10位までを占めています。アメリカはトップ4を独占、ベスト10のうち7ブランドを占め、 100ブランドでも52と過半を占めています。残りは、ドイツの10ブランド、フランスの9ブランド、日本の8ブランド、イギリスの6ブランド、スイスの 4ブランド。韓国の3ブランド、イタリアとオランダの2ブランド、フィンランド、スペイン、バミューダ、スウェーデンの1ブランドとなっています。こうし ことから、アメリカは消費市場も大きいことから、多分野において「売れる」ブランドを生み出していることが解るとしています。
 ドイツ、フランス、日本といった国々は、それぞれが他の追随を許さない「お家芸」を有しているので多数のブランドがランキング圏内にあるとしています。 ドイツは、メルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェといった自動車製造企業がランクインしていて、ソフトウェア企業のSAP、 総合メーカーのシーメンス、スポーツ用品のアディダス、保険業のアリアンス、化粧品のニベアもランクインしています。
 フランスは、ルイヴィトン、ロレアル、シャネル、エルメス、カルティエ、ヘネシーといったファッション、香水、酒といった、高級ファッションブランドや 化粧品が主力分野となっています。
 日本は、ドイツと類似していて、トヨタ(ランキング6位、世界の自動車メーカーのトップに君臨)、ホンダ、レクサス、日産の自動車製造業がランクインし ていて、ソニー、キヤノン、松下といった家電メーカー、ゲームメーカーの任天堂があるとしています。
 そして、日本と共にランクインを果たしている韓国も、サムスン電子、現代、LG電子といった製造業御三家がランクインしていると紹介しています。

2.次に、中国のやるせなさを訴えています。
 中国は改革開放後約30年、早くも「製造の巨人」となり、100種類を上回る大衆商品が生産量世界第1位を占め、”MADE IN CHINA”と表示された商品が怒濤の如く海外へと売られていると自認した上で、世界ブランドランキングベスト100とは全く無縁であることは由々しき問 題としています。
 ブランドは各国の経済が世界市場に進出する際の「足がかり」であって、国際貿易が発展し、製品やサービスの種類が増えるにつれ、より多くの消費者が買い 物の際に商標を目印にする傾向にあり、世界経済は「ブランド識別」時代への流れが一層顕著となっている。つまり、世界経済はもはやブランドの時代である、 とする専門家のコメントを紹介しています。
 また、中国製のスポーツシューズはNIKEのラベルがつけられると「工場出荷価格」から跳ね上がった価格となり、中国製のワイシャツは日本で商標がつけ られた途端に価格が高騰し、中国製のレザーバッグも外国の有名ブランドのマークが入ると急に値上がりするとして、多くの中国企業は力のある自社ブランドを 持たないため、世界市場での競争力は弱く、「加工はするが値はつけない」ために価格決定権と経済効果の面で主導権を握れず、外国有名ブランドの「下請け」 に甘んじざるを得ない、経済のグローバル化という宴会場において中国企業が得られる利潤は、主導権をもつブランド企業に遠く及ばないと嘆いています。その 通りかと思います。だからといって模倣に走ることを許さないのもグローバル経済のルールです。
 記事では、世界で名の知れた中国ブランドは実のところ青島ビールとHaierの二つだけ、辛うじて、Lenovo、Huawei、チャイナモバイル、中 国銀行、新浪網(SINA)、捜狐が挙げられる程度としています。現在中国企業が自社ブランドで輸出を行っているケースは全体の僅か五分の一に過ぎないと 言うデータもあるそうです。

3.そして、日韓の発展例を分析しています。
中国の研究では日本、韓国共に、経済の発展から自主ブランドの構築まで約20年の期間を要しているそうです。この研究成果からすると、現在の中国経済は発 展開始後自主ブランド構築までの「過渡期」にあたるそうです。そして、日本、韓国の先例を参考にすれば、中国企業は早回りしてより早く目標を達成できるだ ろうとしています。こうした記事を見るに付け、日本や韓国から学ぼうとする中国人の気質も窺えます。
 1970年代中期、日本には世界的な影響力を持つブランドはそう多くなく、「日本製」は現在の「中国製」と同様であった。そこで、日本政府は「ブランド が製品の足を引っ張る」状況を改善しようと、企業によるブランド構築に注目して、例えば、大企業間で定期的に会合を開き、専門企業が各企業のトップを対象 にブランドイメージ構築のプロセスを講義し、有名ブランドの立ち上げに力を注ぎ、製品の付加価値を高めるよう促したそうです。また、色々な製品のデザイン 大賞等を開催して、国民の審美眼を養い、消費者のブランド知識を高める一方、消費者のニーズに合わせたブランドバリューの向上を企業に促すことに成功した としています。確かに、戦後高度成長期に日本政府が産業政策(輸出振興策)の一環として企業が意匠開発に力を入れるよう、グッドデザイン大賞制度を創設す るなど支援していたことは事実です。
 また、サムスン電子は以前、日本ブランドの下請けであったが、20世紀末頃から、製造と模倣の担い手から自社のデザインとブランドの確立へと方向転換を 行ってきたそうです。同社は欧米と日本に事業所を設立し、優秀な設計者を大量に募集しし、技術面ではソニーを目標として、強力な研究開発チームを設立した そうです。 2001年にはサムスン電子の特許数はソニーや日立を上回わり、工業デザインにおいても国際大賞を次々と受賞し、数年にわたり世界で最も受賞数 の多い企業にまで発展したそうです。現在、サムスン電子は関与実績のある業種ほぼ全てにおいて世界のトップレベルにおり、その設計スタイルは独自性に富 み、技術面でも新たな創造と発展を続けているそうです。ブランド作りでは、1988年のソウルオリンピック以来、ブランドイメージへの取り組みを強化し続 け、サムスン電子のブランドバリューは2006年には168億ドルとなり、ソニーの129億円をゆうに追い越したそうです。もっとも、ソニーの失速もある とは思われますが、サムスン電子が液晶パネル、携帯電話などの面で日本企業を凌駕するほど発展していることはわかります。

4.最後に中国企業の奮闘を紹介しています。
Haierは数年前、アメリカに工業団地を設立し、中国ブランド「海外進出」の軌範となって活躍中で、その知名度は上昇の一途にあるそうです。
 Lenovoは2005年、IBMのPC事業買収して、世界中の注目を集め、2006年には、トリノ冬季オリンピックで公式スポンサーとなったそうで す。また、Lenovoは北京オリンピック聖火リレーのグローバルパートナー(全世界で3企業のみ、他の2社はコカコーラとサムスン)ですが、同社のデザ インによる聖火トーチの「瑞雲」モチーフは、388に及ぶ国際コンペ参加作品の中で群を抜いていたそうです。Lenovoは北京オリンピックの機会を活用 して、商品マーケティングを展開するので、欧米の消費者が同社のテレビCMを目にする機会も増えていくだろうとしています。Lenovo楊主席は、ブラン ドを築き上げるためには自社のブランド化、もう一つは世界における中国のイメージを変える手助けという2つの責任があると認識しているそうです。
 世界が認める有名ブランドの確立は長期にわたる並大抵ではない仕事であり、短期間で突撃してけりがつくものではなく、たゆまぬ研鑽と普及活動を積み重ね ることで、やっと全世界の消費者から認められるとしています。確かにブランドはマークを作ること以上にそれを大事に守り育てる、ある種の継続した信用創 造、忍耐強い取り組みが求められるものであり、今後の中国企業が最も不得手としがちな課題だと思います。北京オリンピックを契機に、中国ブランドの認知度 が高まるかどうかに注目してみたいと思います。

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