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有古ニュース  2015.5


飲食品等の地理的表示(GI)保護制度の発足

 

 「青森リンゴ」、「神戸ビーフ」など地名に産品名を結びつけた、いわゆる“地理的表示”については、これまで、いわゆる地域団体商標制度による保護が図られていました。地域団体商標制度は、権利者自らが、商標登録をした上で、自主的な品質管理によりブランド価値、登録商標の価値を守り高めることが前提とされていた制度であり、あくまでも地域団体が権利者となる“権利”でありました。

 他方、商標登録によらずに地理的表示を守る制度もあります。ぶどう酒・蒸留酒は、WTO/TRIPSにおいて地理的表示の特段の保護が規定されていることから(同協定第23条)、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」(酒類業組合法)において指定産地の不正使用には罰則が設けられており、財務省が厳しく管理しています。北海道産ウィスキーに“スコッチウィスキー”を冠することはご法度です。ぶどう酒・蒸留酒のみが対象ですので“北海道産パルマハム”は直ちにご法度とはならないわけです。日本の商標法でもぶどう酒・蒸留酒に限り、知名度の高い指定産地の名称を不正に使用する場合は登録しない旨規定されています(同法4条1項17号)。

 今回発足するGI制度(2015.6.1施行、申請受付開始予定)は、このぶどう酒・蒸留酒を倣い、あまねく飲食品を対象に登録された産品の地理的表示について農林水産大臣が罰則をもって不正使用を取り締まる制度です。すなわち、品質管理の要領などを記載した書類(申請書、明細書、生産工程管理業務規程など)をもって申請することにより、登録されれば保護の対象となり、かつGIマークを付することもできるようになります。消費者にもGI制度対象品が判りよく、売り手にとっても格好のお墨付きマークであるわけです。
 ところで、国内ではGI制度と地域団体商標制度の2つの制度が併存するわけで、はてさて、どちらを選べば、あるいは両方登録する価値はあるのでしょうか? 下表に両制度の対比を示します。状況あるいは将来展望によって損得が別れるところかと感じます。ご関係各位には、慎重に、かつ出遅れることなく速やかにご検討される必要があろうかと思います。(弊所は加古川商工会議所及び姫路商工会議所で定期的に知財相談員を担当しておりますので、ご関心の方にはそちらでご相談に乗らせていただくこともできます。)

 なお、GI制度の法的効力は海外では認められません。また逆に“北海道産パルマハム”を日本でご法度とするには、イタリアパルマ地方の食肉団体が日本のGI制度に申請し登録する手続きが必要となります。
 こうした地理的表示の保護は欧州などでは既に普及している制度ですが、WTO/TRIPSには反映されていないので、ぶどう酒・蒸留酒のようなグローバルな枠組みでの保護はまだまだこれからです。ですが、地理的表示の保護制度の実施はTPP交渉の知的財産分野でのテーマにもなっています。今般のGI制度発足により我が国はTPP加盟条件の一つを整えたことにもなるわけです。今後、TPPが成立すれば、まずはTPP加盟各国で地理的表示の保護制度が発足することになるわけです。そこで、加盟国同士の地理的表示保護の枠組みが次第に揃ってきます。それから、加盟各国が地理的表示保護制度の相互認証を合意すれば、やっと、ぶどう酒・蒸留酒と同様の国境を跨いだ保護が実現し、我が国農産品の海外輸出の環境が格段に整備されることに繋がるわけです。道程は遠いですが、まずは日本も第一歩を踏み出したことになります。


GI(地理的表示)保護制度

地域団体商標

登録の要件

表示

産品の産地を特定できる名称

地名と商品等からなる文字

産品/商品等

飲食品等(酒類等を除く)*1

全ての商品・サービス

申請者/出願人

生産・加工業者の団体(法人格を有しない団体も可)

事業協同組合、NPO、商工会 等

産地との関係

品質等の特性が当該地域と結びついていること。

地名と商品等とが密接な関連性を有すると認められること。

伝統性・周知性

概ね25年生産されている実績(伝統性)

需要者に認識されている周知性

生産方法・特性

申請書・明細書に記載

なし

品質管理方法

生産工程管理業務規程に記載

なし

既存商標権との調整

登録商標権者等の承諾必要。(承諾を以てGI登録の団体メンバーに商標を無償使用許諾することとなる)

GI登録名称に対しては権利効力なし(不正競争行為には権利効力あり)。(26条3項)

開示

申請書類(明細書・生産行程管理業務規程含む)を申請後2ヶ月公示・縦覧。

出願内容(標章・指定商品等含む)を出願後公開。

費用

登録免許税 9万円/申請
(代理人費用)

印紙代
 (出願)3,400円+@8,600円/区分
 (登録)@37,600円/区分
 (更新10年)@48,500円/区分
(代理人費用)

保護期間

無期限(取り消されない限り存続)

無期限(定期的更新手続き必要)

保護対象

名称(文字)
GIマーク*2

登録商標(図形・文字等)

登録の表示

GIマーク(表示義務)

“Ⓡ”マーク(任意)

権利付与

なし(国の制度として保護される)

商標権(財産権として保護され、かつ権利としての活用)

不正表示への対応

通報を受け農水省が命令。命令違反を取締り。

行政(警察、税関)が取締り。
商標権者による権利侵害訴訟(差止請求等、損害賠償請求)

品質管理

団体が生産工程管理業務規程に基づき生産・加工業者を管理。
実績報告書を作成、農水省に提出。
必要に応じ農水省による立入検査あり。

なし(権利者次第)

登録管理

なし

定期的更新管理・納付必要。

登録取消

生産工程管理業務の不適合是正等農水大臣命令に違反した場合、
商標権者等が承諾を撤回した場合、等

商標権者の不使用・不正使用により取り消される場合あり。

*1 酒類等は酒類業組合法により保護。観賞魚、真珠、肥料等非飲食品も対象となる見込み。
*2 GIマークは、国内では農水省が不正使用を取り締まる(商標権としての取締りではない)。海外では農水省が商標登録出願をしており、登録された国での不正使用に対しては農水省(権利者)が権利侵害で訴訟等の対処をする。

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